一般選抜(前期)・法曹基礎課程特別選抜(開放型)
第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験) | ||
問題 | : | 憲法、 民法、 商法、 民事訴訟法、 刑法、 刑事訴訟法 |
出題趣旨 | : | 憲法、 民法、 商法、 民事訴訟法、 刑法、 刑事訴訟法 |
一般選抜(前期)
第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験 |
問題 |
出題趣旨 |
出題趣旨
<公法(憲法)>
第1問
宗教法人オウム真理教解散命令事件における最高裁決定(最一小決平成8年1月30日民集50巻1号199頁)に関する理解を問う問題である。
第2問
憲法89条のいう「宗教上の組織若しくは団体」に関する判例の理解を問うものである。具体的には、箕面忠魂碑・慰霊祭訴訟(最三小判平成5年2月16日民集47巻3号1687頁)、空知太神社事件(最大判平成22年1月20日民集64巻1号1頁)、那覇孔子廟事件(最大判令和3年2月24日民集75巻2号29頁)などに関する理解を問う問題である。
第3問
団体の内部事項が司法権の対象となるか否かは、司法権の限界に関する問題の1つである。宗教団体について判例はどのように解しているのかを、板まんだら事件(最三判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁)などに触れつつ説明することが求められている。
<民事法(民法)>
第1問
意思表示の構造から、通謀虚偽表示(94条1項)と詐欺・強迫(96条1項)の各効果の違いを説明することを求めるものである。前者の場合は表示に対応した効果意思がおよそない場合であるのに対し、後者の場合は効果意思は存在するがその形成過程に問題があるにすぎないため、無効と取消しという異なる効果が付与される旨示す必要がある。
第2問
最判昭和40年5月4日民集19巻4号811頁の事案を通じ、抵当権の効力の及ぶ範囲について問うものである。本問では、問題文にも限定があるとおり、建物の競落人と従前の建物所有者との関係を論じれば足りることに注意を要する。
第3問
債権者代位権の制度の基本的な理解を問うものである。①について423条の2、②について423条の3を挙げて問いに答えたうえ、債権者代位権は債務者の「責任財産保全の目的」のためのものであり、原則として平等主義に基づく強制執行制度を前提としているが、上記の各条文は勤勉な代位債権者の「債権の簡易優先回収機能」を図ったものであることが説明できればよい。
第4問
①について親権の喪失(834条)・親権の停止(834条の2)を検討し、②について未成年後見の開始(838条1号)を指摘できればよい。
<民事法(商法)>
第1問
取締役会設置会社においては,株主総会の決議事項は,会社法及び定款に定めた事項に限定されている(会社法295条2項),これは,株主に経営させるのではなく,取締役会に経営を委ねさせる趣旨であることを理解しているかどうかを問う出題である。近時は,この趣旨を推し進めて,定款で株主総会の決議事項を拡大していく際にも,無制限に拡大できるのではなく,経営にかかる事項について定款で株主総会決議事項とすることには,制約があるとする学説も現れてきている。
第2問
株主の権利行使に対する利益供与(120条)に該当し,決議方法に関する法令違反として株主総会決議取消事由(831条1項1号)を構成することになるかどうかを検討してもらう趣旨の出題である。
第3問
いわゆる利益相反取引のうちの間接取引(356条1項3号)として,取締役会決議による承認が必要となるが(365条1項),もしこれを欠いていたとしても,取引相手との関係では,直ちに無効となるのではなく,会社は,悪意の相手方に対してのみ無効主張できる(いわゆる相対的無効)とするのが判例法理であるが,これを理解しているかどうかを問う出題である。
第4問
直接損害は,会社の損害を経由せずに(因果関係の経路の途中に含まずに)第三者の損害が発生している場合であり,取り込み詐欺が典型例である。間接損害は,会社の損害を経由して第三者の損害が発生している場合であり,役員等が会社経営に失敗して会社を倒産させた場合が典型例である。これらの基礎知識を理解しているかどうかを問う出題である。
第5問
被相続人が保有していた株式は,共同相続人による準共有となり,権利行使者を指定しないと会社に対して権利行使できないのが原則である(106条)。権利行使者は,持ち分の過半数の決議で決まり,権利行使者の議決権行使の内容は,決議内容によって,持ち分の過半数または全員一致によって決定される,とするのが判例法理である。これらの基礎知識を理解しているかどうかを問う出題である。
<民事法(民事訴訟法)>
第1問
(1) 給付訴訟及び債務不存在確認訴訟の訴訟物が何であるか説明できるかを問う問題である。
(2) 同一の債権についての債権者による給付訴訟と債務者による債務不存在確認訴訟が競合した場合における重複訴訟の禁止ルールの適用の在り方について理解しているかを問う問題である。
第2問
(1) 主要事実と間接事実の違いを理解しており、かつ、具体的事案における攻撃防御方法がそのいずれなのか区別できるかを問う問題である。
(2) ①(1)で論じたことが弁論主義の適用の有無を分け得ることを理解しているか、②民事訴訟において当事者に対する不意打ち防止が必要であること及びそのことにどのような理論的位置づけを与えるべきかを説明できるかを問う問題である。
<刑事法(刑法)>
本問は、簡単な事案を素材にして、
①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、
②法的知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無、
③個々の問題に関連する判例の知識・理解の有無、
④窃盗罪に関する正確な理解の有無、
⑤事後強盗(致傷)罪に関する正確な理解の有無、
⑥窃盗犯人ではない者が事後強盗(致傷)罪に関与した事案を理論的に的確に処理する能力の有無、
⑦罪数論に関する正確な理解の有無
等を確認することを目的としたものである。
<刑事法(刑事訴訟法)>
本問は、最判平成15・2・14刑集57巻2号121頁を素材として作題したものであり、先行手続の違法と違法収集証拠排除法則の適用について問うものである。
<小論文>
東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力,すなわち,資料を正確に理解し,整理・分析してその要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。なお,この試験は中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院法学未修者等選抜ガイドライン」(平成29年2月13日)において「小論文・筆記試験」に含まれるとされる内容を網羅するよう作成されている。
本問は、都市形成の流れ(そして特異な存在としての東京)と、スプロール現象への都市の対処及びその構造的限界とについて問うものである。前者については、グラフを適切に読み取り、都市に人が集まる理由や、いずれ都市化自体がもたらすデメリットにより頭打ちを迎えるということなどを著者の叙述に従って説明できているかを評価した。後者については、都市の内外の要因(たとえば、都市計画法上の制度の実効性の低さ、郊外化を促してきた国土政策に対応した都市の政策、持家社会による個別的利益の固着化、二元代表制のもとでの地方議会における個別的利益の表出など)を適切に整理した上で指示された分量の範囲内でまとめることができているかどうかを評価した。