東北大学

2024(令和6)年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について(一般選抜(前期)・法曹基礎課程特別選抜(開放型))

一般選抜(前期)・法曹基礎課程特別選抜(開放型)

第2次選考:2年間での修了を希望する者(法学既修者)に対する法学筆記試験(法律科目試験)
問題 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法
出題趣旨 憲法民法商法民事訴訟法刑法刑事訴訟法

一般選抜(前期)

第2次選考:3年間での修了を希望する者(法学未修者)に対する小論文試験
問題
出題趣旨

出題趣旨

<公法(憲法)>

本問は,北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)と夕刊和歌山時事事件(最大判昭和44年6月25日刑集23巻7号975頁)に関する理解を問うものである。

問題1と問題2の小問1では,それぞれの判例の立場を説明することが求められている。刑法230条の2は,日本国憲法制定を受けて設けられた規定であり,表現の自由の保障と名誉の保護との調整を図ろうとするものである。小問2では,表現の自由の保障という観点から,判例の立場を解答者はどのように評価しているのか,という点を論じることが求められている。

<民事法(民法)>

第1問

基礎的な事例問題であり、双方代理に関する民法108条1項本文のルールを示した上で、事実を当てはめて、無権代理を理由としてYが引渡しを拒むことができる旨を論じることが必要である。

 

第2問

発展的内容の事例問題である。債権αのために甲について動産売買の先取特権(民法311条5号、321条)が成立すること、甲の転売によりAが取得した債権βにXは物上代位できること(民法304条本文)を出発点として説明したのちに、債権βが譲渡されたことが民法304条ただし書に当たるかを論じることが求められている。判例(最高裁平成17年2月22日民集59巻2号314頁)の立場と異なる結論であっても、その判断の過程を積極的に論じていれば相応の点数を与えている(逆に判例通りの結論でも、判断過程が論じられていなければ高い点数にはならない)。また、抵当権の場合(最高裁平成10年1月30日民集52巻1号1頁)と適切に比較して論じるものは高く評価している。

 

第3問

書面によらない贈与(民法550条)に関する基本判例(最高裁昭和60年11月29日最高裁判所民集39巻7号1719頁)を取り上げるものである。単に必要とするか否かの結論を述べるだけでなく、同条の趣旨を踏まえた論述をすることが求められている。

 

第4問

複数の制度を比較しながら、その相違点を説明する基本問題である。客観的な事情の存在だけで適用されるか、誰かの意思に基づいて適用されるか、後者については誰の意思によって適用が決定するか、また裁判所の手続を要するかといった点の違いを説明することが求められている。

 

民事法商法)>

第1問

商号続用(会社22条),債務引受の広告(会社23条),詐害事業譲渡(会社23条の2),法人格否認の法理などについての救済策について論じてもらう出題である。

 

第2問

取締役会決議を欠く取引は,原則として有効だが,相手方が同決議を経てないことを知りまたは知り得べかりしときに限って無効とする最判昭和40年9月22日民集19巻6号1656頁を理解しているか否かを問う出題である。

 

第3問

退任登記未了の取締役は,辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合,及び,登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し,辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情が存在する場合に,対第三者責任を負いうるとする最判昭和62年4月16日判時1248号127頁を理解しているか否かを問う出題である。

 

第4問

過剰な配当を受領した株主,及び,配当を行った業務執行者等が責任を負うこと(会社462条・463条)を理解しているか否かを問う出題である。

 

第5問

株主名簿の書換は対会社対抗要件であり(会社130条),当事者間では株式譲渡は有効であり,譲受人は譲渡人に対して不当利得返還請求ができることを理解しているか否かを問う出題である。

 

<民事法(民事訴訟法)>

問1 当事者の攻撃防御方法としての抗弁についての理解を問う。

 

問2 当事者の事実主張に対する相手方当事者の応答についての一般的理解を問うとともに、具体的事案における解釈を問う。

 

問3 弁論主義のうちいわゆる主張原則(第1テーゼ)に関する理解を前提に、具体的事案における裁判所の下した判決のもつ訴訟法上の問題点を発見させる。

 

<刑事法(刑法)>

本問は、簡単な事案を素材にして、

①問題となる行為を的確に捉える能力の有無、

②法的知識を活用して事案を適切に解決する能力の有無(罪数処理を含む)、

③個々の問題に関連する判例の知識・理解の有無、

④住居侵入罪に関する正確な理解の有無、

⑤窃盗罪の着手時期に関する正確な理解の有無、

⑥強盗罪に関する理解を事案に即して論じることができる能力の有無、

⑦正当防衛に関する理解を事案に即して論じることができる能力の有無、

⑧防衛行為が第三者に侵害結果を生じさせた場合について、事案に即して適切に論じることができる能力の有無、

等を確認することを目的としたものである。

 

刑事法刑事訴訟法)>

設問は、最大判昭和36・6・7刑集15巻6号915頁を素材として作題したものであり、刑訴法220条1項柱書の「逮捕する場合」という要件の意義を問うものである。

<小論文>

東北大学法科大学院は,法的思考に対する適性と正義・公正の価値観を備えた者を学生として受け入れることを理念としている。小論文試験では,法的思考を身に付けるために必要不可欠な能力,すなわち,資料を正確に理解し,整理・分析してその要点をまとめ,それを文章へと構成する力を評価することを目的としている。なお,この試験は中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院法学未修者等選抜ガイドライン」(平成29年2月13日)において「小論文・筆記試験」に含まれるとされる内容を網羅するよう作成されている。

本問は、国家連合に関する欧州の政治思想史に関する論稿を素材として、そこに記されている内容及び筆者の見解に関する説明を求めるものである。問1では、筆者が紹介する構想の内容を十分に理解したうえでその主張の中核部分を抽出し、適切にまとめることができているか、問2では、筆者が行った分析の内容を適切に把握し説明できているか、問3では、筆者が紹介する主張のポイントを理解し説明できているか、を評価の対象とした。
いずれの問いにおいても、求められている内容が指示された分量内でまとめられているかをあわせて評価した。

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