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東北大学法科大学院メールマガジン第64号 07/29/2010 ◇平成23(2011)年度東北大学法科大学院学生募集要項について
「平成23(2011)年度東北大学法科大学院学生募集要項」がホームページに掲載されております。東北大学法科大学院の修了者には、「法務博士(専門職)」の学位が授与され、新司法試験の受験資格が付与されます。入学を検討されている方は、ぜひご覧ください。
出願書類の用紙の請求は、入試関係資料請求ページ(テレメールWeb)から行うことができます。請求方法の詳細は、以下のアドレスにアクセスした後、ページ内の指示に従ってください。 ◇平成22(2010)年度東北大学法科大学院オープン・キャンパスについて(再掲)
東北大学法科大学院では、下記のとおり、オープン・キャンパスを開催します。 東北大学法科大学院の受験を希望される方はもとより、法曹の仕事に関心のある方、法科大学院への進学を考えている方など、たくさんの方のご参加をお待ちしています。
日時:2010年8月28日(土)13:00-17:00(受付12:30〜)
プログラム:
お問い合わせ・参加申込み方法:
参加のお申し込みは、東北大学法学研究科専門職大学院係宛てのメール(opencampus@law.tohoku.ac.jp)に、住所・氏名・電話・模擬講義のクラス希望(既修者クラス/未修者クラス)を明記の上、事前にご連絡いただけると幸いです。 事前の申込をなされていない方も、当日のご参加を心から歓迎いたします。 http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/opencampus/#sendai ◇連続講演会のお知らせ(再掲) 東北大学法科大学院では、現在、修了生・在学生・教職員を対象に連続講演会を開催しています。 第4回(最終回)については、本法科大学院の修了生である庄司智弥弁護士をお迎えして下記のとおり開催します。講演では、少年事件についてお話し頂く予定です。皆様ぜひご来場下さい。
第4回 9月1日(水) 18:00〜19:30 ◇エクステンション教育研究棟竣工記念行事行われる 本年6月末、東北大学片平キャンパスに、法科大学院等の専門職大学院の教育拠点となる「エクステンション教育研究棟」が完成し、それを記念して、7月27日(火)にエクステンション教育研究棟竣工記念行事が開催されました。 記念行事には、多くの関係者が参加し、会計大学院協会の八田進二理事長、国際刑事裁判所の尾崎久仁子判事、本学法学研究科の名誉教授であり元最高裁判所判事の藤田宙靖先生による記念講演が行われ、続けて記念式典が行われました。 ご参加いただいた皆様に、心から御礼申し上げます。 今回は、本学の2008年度修了生であり、2009年度新司法試験に合格し、現在厚生労働省に勤務されている伊藤憲昭さんからのご寄稿をお送りいたします。 ロースクールでの学習、新司法試験のほか、国家公務員の就職活動についても詳しくご紹介いただきました。 ロースクールから国家公務員に進んだOBより平成20年度修了生 伊藤憲昭さん
<はじめに> 平成20年、21年と国家公務員採用T種試験(法律職)に合格し、21年には新司法試験にも合格させていただきました。また、21年の9月から本年の3月までは研究支援者として片平で勤務させていただくという巡り合わせにも恵まれ、ほぼ7年を仙台・東北大学で過ごしたこととなりました。 現在は東京・霞が関の厚生労働省に勤務させていただいておりますので、本稿では法科大学院からどのようにして国家公務員に進んだかを中心に、法科大学院での生活や入省後の感想も交えてお話させていただきたいと思います。現在国家公務員に関心のある方はもちろん、そうでない方もご一読いただけたら幸いに存じます。よろしくお願いいたします。
<ロースクールでの学習> しかし、その甲斐あってか、通年みっちりと授業を受けさせていただいた行政法は自分の中では得意科目になっていきましたし、学部のときに学習の薄かった両訴も苦手意識を持つまでにはならなくなりました。学部時代得意だったはずの刑法は、はじめのテストで自分の実力にショックを受け、また同級生のレベルの高さにも同様にショックを受けましたが、授業についていくうちに何とかなっていきました。 L3になると若干時間に余裕が生まれたので空いた時間に新司法試験の答案練習をしながら、興味のあった先端科目を履修していきました。中でも、新司法試験で選択科目にした国際法(公法系)や刑事実務演習Uは熱心に面白い授業をしてくださる先生にも恵まれ、充実したものとなった覚えがあります。 私は自習室をあまり利用せず家で息抜きをしながらマイペースに勉強しました。それがよかったのかどうかはわかりませんが、特に新入生の方は早く自分の勉強のスタイルを確立することが良いと思います。
<新司法試験について> 国家公務員を目指しながらも、新司法試験を受験しましたのは、法科大学院入学以前から新司法試験合格が目標であったこと、法曹が国家公務員と同様に魅力的な仕事という印象は変わっていなかったことなどさまざまな理由があってのことです。軽い気持ちで受けたわけでもなく、試験勉強自体は国家T種と比較できないほど厳しかったので、合格した日は勤務していた片平で大泣きしたのを昨日のことのように覚えています。 学部、法科大学院と成績が優秀ではなかった自分は、まず知識不足なので短答が苦手でした。これは択一六法と問題集を中心に何回も回しました。 論文はL3にあがったころは2時間過ぎても1教科も書けない状況でしたが、上手な答案をまねることからはじめ、ベストな時間配分や解き方を考えていきました。練習の甲斐あってか、本番では時間切れすることなく大体の教科で8頁の答案を書くことができました(念のためですが、ページ数が多ければ良いというわけでは当然ないです)。 あまり試験対策的なことを言っても良くないのかもしれませんが、痛感したことを書かせていただきますと、敵(という表現は適当ではないかもしれませんが……)を知り、己を知れば百戦危うからずということです。実際は危うくてひやひやしましたが……。 まだ試験までは時間がありますので、過去問や類似問題を解いたことがないという方は一度解いてみると良いと思います。自分の現状を知り、どのようにして合格するかという青写真を描くことが始まりだと思います。 そして必要なところは重点的に、できるところは時間があれば……などと計画的に取り組むと効率的です。ゴールも自分の現状も知らずに、「昨日は何時間勉強した」「誰々と勉強会をしている(勉強会は有効かもしれないが、現状や必要な要素が同じとは限らない)」「基本書を何回回した」という積み上げ型の勉強はストレスがかかると思います(長時間勉強することや勉強会、基本書読みこみを否定しているわけではないです)。 自分は知識をつめきれないのは織り込み済みで何とか短答を通過して、論文勝負(特に勉強して自信のついた公法系・刑事系で取り返す)という作戦でいました。単に知識がないことからの逃避かもしれませんが、期限のある試験である以上最適なプランを試験対策として立てることは重要だと思いましたので。 私の言う分析やそれを基にしたプラン立てが必ずしも正しいとは限りませんが、どうか皆様ご自分のスタイルを確立して取り組んでいただけたらと思います。
<国家公務員の就職活動について> そんな中で、法曹として社会とかかわっていくことも魅力的に感じたままではありながらも、より立法・行政の立場から社会にアプローチしたいと考え、国家公務員に関心を持つようになりました。 幸いにして大学受験のときの歴史の知識や法科大学院入試でも使用した数的処理の考え方、L2で勉強した法律の知識などが役に立ち、L3のときに国家公務員試験に合格しました。そのときは合格したという勢いで、6月から7月にかけての官庁訪問に乗り込み、文部科学省・警察庁・厚生労働省を回らせていただきました。 文科省では社会科教育の改革や情報リテラシー教育の充実を通じた民主主義社会の成熟や、学校・家庭・地域が協同したしつけのあり方などについて、警察庁では犯罪の検挙から抑止へ、そして抑止策を講じることによる潜在的犯罪被害者・加害者を救うこと、少年犯罪への取り組み方、インターネットと犯罪などについて、厚労省では障害者の社会参加における障害者・企業・地域のあり方、ワークライフバランスを推進する企業への支援などについてそれぞれの面接で語らせていただきました。 ただ、まだ自分の中で本当に法曹ではなく公務員として働くという確信がなかったことや、説明会にも1回出席しただけであり霞が関で働くというイメージが持てていなかったことなど、熱意や勉強量の不足もあってか、官庁訪問ではある程度のところまで進んだものの最終的に内々定をいただく事はできませんでした。 しかし、そのような官庁訪問を経験し、霞が関で国家公務員として働いている方の生の話を多く聞き、この国を良くしたいという思いをもってそれぞれの方が働いている雰囲気を肌で感じ、やはり国家公務員として働いてみたいという思いが強くなりました。そこで、一度だめでもあきらめることなく、9月の東京での説明会をはじめに、出席できる説明会には出席して勉強し志望を強めていきました。 そのような状況の一方で、法科大学院では新司法試験が近くなりますます勉強のギアがあがってくるころであり、まわりに国家公務員を志望する人もいなかったので、就職活動は孤独なものと不安になっておりました。 しかし、環境法の授業を通じてお世話になり最初の官庁訪問の際のアドバイスを下さった苦瀬先生や、突然公務員になりたいのでご指導くださいと無礼にも押しかけた私を温かく受け入れてくださった生田先生が、自己分析や官庁の勉強についてアドバイスを下さったり模擬面接をしてくださったりとご指導してくださり、大変勉強させていただくとともに孤独な就職活動という不安を解消してくださりました。 それだけでなく、公務員を志す学部生と知り合えたことや、一度目の官庁訪問で知り合い内定をもらった人とそうでない人の双方とも連絡を取ったり実際に会ったりして話をすることが心強かったと感じています。 また、基本的に法曹養成を主眼とするロースクールでも、仲の良かった同級生や他学年の友人、主にお世話になった成瀬先生、芹澤先生といった方々は私の進路選択を温かく見守ってくださり、精神的な支えになってくださいました。 新司法試験の勉強と官庁訪問の準備を並行して行っているうちに法科大学院の修了を迎え、その後の公務員試験、新司法試験の受験を経て、2度目の官庁訪問の時期となり、警察庁・厚生労働省・財務省本省を訪問し、1年間の思いと成長した自分を見ていただくつもりで面接に臨みました。 面接では、1度目の官庁訪問では自分に足りなかったと痛感した、「個別の政策だけでなく、省庁全体としてどのような政策を行っていくのか(換言すれば、どのような国を作っていきたいのか)」という、国家公務員T種受験生に求められていると思われた広い視野を勉強し、それを起点に個別の政策について話していくということを意識しました(ただし、個別の政策を熱心に話して内々定をもらった人もいますし、私の意識付けが一般的な面接の態度として良いか否かはわかりません)。 1度目の官庁訪問でもそうだったのですが、2度目の官庁訪問でも、面接してくださった職員の方や控室で話した受験生の方々は高い志と深い見識、そしてユーモアあふれる人間性を見せてくださって、非常に勉強になるとともに、厳しい就職活動を楽しく乗り切ることができました。 不謹慎に「楽しい」といっても、そこは就職活動ですから、「今年も決まらなかったら次は厳しい」という思いはもちろんありましたし、受験生が篩いにかけられていく中で1年前の苦い思い出を想起することもありました。しかし、自分のしてきた勉強、新司法試験との両立という経験が、そして、魅力的な職員の方と将来の同期となる受験生との交流が不安を打ち消してくれました。 結果的には私が厚生労働省に魅力を感じ、厚生労働省からも評価いただいたことで内々定をいただきました。志望の根底には、自分がつくっていきたい国、生まれたからには誰もが幸福に生きられる国というものを厚生労働省の立場から支えていきたいという思いがありました。教育や犯罪、社会保障費の財源など関心分野は多々ありましたが、それも元をたどれば、人々が自分自身の人生を生きるための手助けという視点もあると思います。 厚生労働行政の分野はそれこそ「ゆりかごから墓場まで」、いわゆる社会的弱者といわれる人だけでなくすべての人に密接にかかわっていくものです。そして、それゆえに、より良い社会保障制度、よりよい労働環境をつくることは、結果的に私の他の関心分野であった犯罪の抑止であったり公教育・家庭教育の充実であったりというものに波及していくのだという青臭い理想を持って働ける環境だとも思いました。そういうわけで、私は、厚生労働省に入って、日本に住んでいる人が幸福を掴むための基盤となるような、あたり前の生活を送るためのお手伝いがしたいと考えたのでした。 また、もうひとつの視点として、自己の人生を振り返ってみると、先人が作ってくださったいろいろな制度に守られて生きてきたことを感じ、その中でも特に個人的にお世話になった厚生労働行政に、50年、100年後にも続く良い社会保障制度を残していくことで恩返しがしたいと考えたということもありました。
<事後的雑感と近況> 私は今、省内での研修を終えて、労働基準局監督課と併任という形で労働基準局安全衛生部計画課法規係に配属が決まり、少しずつ業務に携わり始めたところです。目の前の業務を覚えるのに手一杯、与えられた仕事をこなすのに精一杯の日々になるかもしれません。しかし、そんな中でも、先輩方のように、いつまでも熱い思いと高い志をもって公務に取り組んでいきたいと思っています。根底には初心をいつも置いておきたいです。 安全衛生部では、労働者の安全と健康を守るための諸施策を行っています。まだ新人にできることは少ないかもしれませんが、施策の向こうには労働者の皆様が変わりなく毎日健康にご自身の仕事をして人生を豊かにすること、その家族がいつでも温かくお帰りと言えることなど、国民の皆様の当たり前の暮らし、当たり前の笑顔があることを常に意識して仕事に取り組みたいと思います。 私は法律学を学ぶ上で、特に法科大学院でケース・スタディを心がけてやってきて、実際に多くの事例で、ある日突然人生が変わってしまうということを痛感しました。殺人、交通事故、公害、医療事故など、被害者の方はもちろん、その家族、加害者やその家族、それらを取り巻く環境が激変してしまい、本来そのようなはずではなかった人生を歩まざるを得なくなった方の心境は簡単にわかるといえるほど生易しいものではないと考えます。 それは工場などの事業場においても変わりません。労働者の方がある日突然ご自身が想像されていた幸福な人生をはずれ、不本意な人生を送ることになってしまってはならないです。そうならないように労働者を守って、その方々の生活のお手伝いをさせていただくことができることが、今の部署の魅力であると同時に大きな責任であると思います。 将来的に部署が変わっても、その仕事が何につながっているのかを常に意識して行政官として成長していきたいという思いをこの原稿の執筆を通して再確認させていただきました。私は、しっかりとした軸を自分の中に持った上でさまざまな人・専門家の意見を聞いて判断し政策を実行していけるゼネラリストであることを基本に、法科大学院出身者として法律に明るく、一見難しい施策をわかりやすく皆様に伝えることができる、言葉を大切にする行政官として成長していきたいと思います。
<法科大学院生の皆様へ> 多くの方々は法科大学院生の大きな目標である新司法試験を経て法曹へという道に邁進されていらっしゃると思います。法曹も事後的救済で国民の皆様を助けることができるほか、事前の予防というアプローチもできるとても魅力的な職だと思います。ご自身の目指す法曹像に近づくためにがんばってください。 ただ、法曹を目指すうえでも、ぜひ公や民間のしていることにも視野を広げていてください。実際に使う法律がどのようにできたのか、今どういう問題があってどういう法律が作られようとしているのか。これは一見司法試験とは関係ない無駄な勉強かもしれませんが、仕事で実際に相手にするのは人であり、問題を解決するためのツールは多くの法律なのですから、視野を広げてさまざまな問題意識を持っておくことも悪くないと思います。 試験勉強は大変厳しく、法科大学院の学習も忙しいので余裕がない……そういう状況でも頭と心にいい意味でのあそびの部分をつくっておいてください。偉そうな物言いで恐縮ですが、私自身痛感したことですので、書かせていただきました。
<おわりに> 勉強が手につかなくなることもあるかもしれません。そのときは、初心に立ち返ってみるのも良いかと思います。 皆様の法科大学院での生活が、そしてその後の生活が実りあるものになりますよう祈念させていただき、終わりにさせていただきたいと思います。 ありがとうございました。 ◆編集後記
今回は、本学を修了後、厚生労働省に入省された伊藤憲昭さんのご寄稿をお送りいたしました。 大変ご多忙の中、ご寄稿いただいた伊藤憲昭さんに心から御礼申し上げます。 (杉江記)
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