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東北大学法科大学院メールマガジン第54号 02/12/2010 「新司法試験合格者の講演会」における講演概要の第3弾です。今回は、去る平成21年10月26日(月)(第2回)にご講演頂いた小井朗さんの合格体験談をご紹介いたします。 合格体験談 小井 朗さん
○はじめに
<科目別の勉強方法>
○憲法 あとは、判例についてですが、私は朝の勉強会で判例百選を読み込んでいました。勉強会では、『憲法判例百選』、『行政法判例百選』、『重要判例解説』を利用しました。憲法や行政は、択一試験で、判例について非常に細かいことについてまで出題されます。そのときには、ただ、判例を読むということではなく、その判例に関わる論点について、教科書の判例索引で引き、基本書の該当部分をもう一度読んでみたり、憲法の場合はさらに自作のノートを作ったりしました。L3の秋口くらいから始めたのですが、本番直前には安定した状態で臨むことができました。
○民事訴訟法
○商法 商法総則については、択一試験の点数に結びつくので、直前期に短期間で勉強するとよいと思います。手形・小切手法については、L3の冬休みの時期に少し時間をかけて勉強するとよいと思います。手形・小切手法は、基本的な用語の馴染みが薄いため、短期間の勉強では効果が上がりにくいと思います。一方で、択一試験には出題されますが、論文試験ではあまり出題されないと思うので、受験のことだけを考えると無視するのも一つの考え方であると思います。
○選択科目 私の場合は、L2の後期に知的財産法を選択して非常に一生懸命勉強しました。それくらい勉強すると、選択科目についてかなり有利な状況になりますが、L2の後期は必修科目だけでもかなり大変ですから、選択科目を取るのはとても勇気がいります。自分のキャパシティーと相談して、選択科目をどのように履修するか考えるといいと思います。
<学年ごとの勉強方法>
○L1〜L2期 まず、授業についてですが、出席が必須ですから、これを活用する方が得だと思います。今年度の新司法試験でも、合格している人はだいたい成績がよく、授業での発言からみても、この人はきちんと勉強しているなという人がほとんど合格しています。特に、L2期でしっかり授業のノートを作成しておくと、最後まで絶大な効果を発揮してくれます。したがって、授業を利用して、最後まで使えるノートを作っていく感覚でやっていくとよいと思います。私の場合は、授業の予習を中心に勉強し、予習の段階でノートを8割程度作成し、授業で補完するという形でやっておりました。疑問点はなるべくその日のうちに解決するようにしていました。さらに、テスト勉強の際に、全体を俯瞰して見えてくることを補完して、ノートに加えたりしました。 授業以外では、L1〜L2は民法をやるのがよいと思います。何故かといいますと、民法は範囲、量が膨大なので、L3期に入って1から始めるのはとても難しいです。私の場合も、最終的にはある程度割り切って、要件事実と判例百選と、判例百選の論点を基本書で確認するという形でしのいでいました。 さて、L1〜L2期に、民法では何をするべきかですが、一つの方法として、基本書を読むことが考えられますが、私にとってはあまり頭に残るものではありませんでした。試験会場に持って行ける知識は限られているので、本番に持って行くための知識を得るには、判例百選と択一の問題集(タクティス等)を活用すればよいと思います。なるべく、L1〜L2期の勉強ですから、記憶に残る形の勉強方法でやっていくことが大切だと思います。現在L2の方は、春休みに民法だけでもやっておくのがよいと思います。
○L3期 国家公務員の一種試験を全国20番で受かったという私の友人も、司法試験が終わった瞬間は絶対落ちたと思ったそうです。司法試験を受験した方はわかると思いますが、それは決して大げさなことではありません。成績の良い方もずっと不安になりながら勉強しているという感じなので、最後まで諦めずに勉強をするということが非常に大切です。試験本番の5日間は非常に辛いのですが、その日の夜も次の日に向けて勉強しなければいけないです。最後のふんばりは非常に大切です。 L3の方向けですが、私は頭に血が上るとなかなか寝付けないということがありました。それで、直前期には、昼寝の際に「冷えピタ」を使っていまして、そうすると疲れが取れやすくなりました。また、眠りが浅いということもあり、試験前の終盤2ヵ月くらいは睡眠導入剤を処方してもらっていました。寝つきが少しよくなるだけでなく、眠りが深くなって疲れもよく取れるようになりました。ただ、人によっては次の日の午前中いっぱい、頭がぼーっとしてしまうこともありますが、眠りが浅いという人は試してみるといいかもしれません。
<司法試験の勉強法>
○択一試験 択一試験は本番初日にありますので、そこで足切りの不安を残すと次の日以降の精神状態に響くという話をよく聞きます。それをなくすためには、直前模試や過去問で安定して平均点程度はとれるようにしておくことが大切です。そこで平均点がとれないと不安がとれないです。なぜなら、本番の択一試験も難しいので、本番での手応えから得点を推測するのが大変難しいからです。私は本番の択一試験でそこそこの成績を取ることができましたが、手応えはないという感じでした。ただ、模試等で平均点を下回ったことがないのでまあ大丈夫だろうという感覚でいました。
○論文試験 書き方を学ぶのに最も良い方法は、上位答案を読むことだと思います。私は、過去問を勉強する際には、上位者の答案を10人分掲載している『Hi-Lawyer』を購入して、上位の方の答案と私の思考方法に近いと思う方の答案、合計大凡3つ分を読むようにしていました。やはり、上位者の答案を読むのが一番だと思います。もう1つの方法として、勉強会で学ぶことも考えられますが、実のある勉強会をするためのメンバーを集めるのは、特に論文の場合は大変です。また、L3の試験が終わった後に、萩法会が主催する答案練習会があると思いますが、その答案練習会のときにA評価をもらった答案のコピーを集めて読んでいる人もいました。私はしていませんでしたが、よい答案の素材を集めたいという人にとっては、よい方法だと思います。 また、論文のレベルを上げるためにいいと思った方法として、短期間に何回も書くというのも効果的だと思います。10回論文を書くとして、1週間に1回に分けて10週にかけて書くよりも、10日間毎日書いた方が、レベルが上がりやすいと思います。短期間にレベルを上げるには、短期間に集中して書いて、研究していく方がよいと思います。私の場合は、L3の試験終了後、萩法会の答案練習会、2月の半ばから4月にかけて週2回程ありますが、萩法会のスケジュールに合わせてやっておりました。 過去問についてですが、L3の方でやっていない方もいらっしゃるかもしれません。過去問はいつやっても構わないと思いますが、後に回してやる必要もそんなにないと思います。人によっては、基本的な知識が揃うまでは過去問をしないという人もいるかもしれませんが、基本的な知識が全て揃うという実感がもてる日は基本的には来ません。本番当日でも来ないと思って頂いてもいいくらいです。ですから、試験の後や、判例百選を回した後等の一区切りの段階で、過去問を解いてみるのがよいと思います。ただし、論文をまとめて勉強する時期を作る場合は、2〜3年分の問題を取っておいたりするのもよいかもしれません。
<使用した本について> まず、過去問については、『Hi-Lawyer』の上位答案集を使用していました。択一用としては、『法学セミナー』のものを使用していました。 憲法は、芦部先生の『憲法』を中心に、野中先生他4人が著作した『憲法』を参考書として使用しました。また、人権の部分については、勉強会のときに作成した簡単な自作のノートを用いて勉強していました。行政法は、薄い本である稲葉先生の『行政法と市民』を用いました。既修の方であれば、稲葉先生の教科書を基本的に使用するとよいと思います。宇賀先生の『行政法概説』等は本当に必要なときに読むという形で使用していました。 民法は、内田先生の『民法』を使用して、『問題研究要件事実 言い分方式による設例15題』、『紛争類型別の要件事実』、全体の俯瞰のために潮見先生の『入門民法(全)』も利用しました。後は、要件事実のレジュメを用いました。商法は、『会社法百問』、『会社法事例演習』の前半部分だけを読みました。後は、ノートとレジュメです。民事訴訟法は、『ロースクール 民事訴訟法』と、藤田先生の『講義 民事訴訟』、中野先生等の『新民事訴訟法講義』を使いました。 刑法は、裁判所書記官研修所の『刑法概説』、西田先生の『刑法』、『伊藤真 試験対策講座』とノートとレジュメ、刑事訴訟法は『刑事訴訟法(有斐閣アルマ)』、『ケースブック刑事訴訟法』にノートとレジュメを用いました。 全科目共通のものとして、判例百選、3年分の重要判例解説、タクティスです。総じてみますと、基本的なものしか使っていないということになります。本を選ぶときに大事なことは、基本的には薄い本を用意して、必要を感じたら分厚い本をみて理解を深めるという感覚がよいと思います。分厚い本に記載されている細かい知識は試験本番まで持っていけないので、試験本番にまで持っていける知識が網羅してある薄い本をキープしておくのがよいと思います。
<その他>
○普段の生活について
○最後に ◆編集後記 今回は新司法試験の合格体験談・第3弾をお送りしました。掲載にご快諾いただいた小井さんに、心から御礼申し上げます。 (杉江記)
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