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東北大学法科大学院メールマガジン第31号 03/31/2008 ◇ミニ・オープン・キャンパス―Q&A 去る3月9日(土)午後,東京八重洲ホールにて,東北大学法科大学院ミニ・オープン・キャンパス(平成21年度入試・東京入試説明会)を実施いたしました。20名以上の来場者を迎え,盛会のうちにプログラムを終了することができました。ご来場いただいた皆様に,心から御礼申し上げます。 なお,お寄せいただいた質問事項のうち,主なものをQ&Aの形でまとめましたので紹介いたします。 (入試関係)
(学生生活)
(新司法試験,進路)
今回は,去る1月18日(金)夕方,片平キャンパス第4講義室において,小林愛先生(国見台病院,臨床心理士)をお迎えして行われた講演会の概要を掲載します。
「ストレスマネージメントの方法」 ○はじめに カウンセラーの小林です。現在は国見台病院で臨床心理士として働いておりますが,同時に駿台予備校で9年間カウンセリングをしていました。皆さんは,これまで大学受験を含めて受験を乗り越えてこられた方々と思いますので,それなりに,精神的な安定を保つことについて理解されていると思いますが,そのような方は確認の意味で,そうでない方は,何か解決の糸口を見出してもらえれば,そう思っています。 また,ストレスというのは,受験期だけではなく,生きていく上でずっと付きまとうものです。就職も,転職も,昇進も,それから結婚や離婚もそうです。何か,今までの自分と違うという変化があるときは,それがストレスになります。そのときに,どのように乗り越えるか,それは人それぞれですが,ご自分のストレスへの対処方法を自覚される,または身につけられると今後の人生に生きてくる,という面もあります。 ○ストレス時に陥りやすい心理状態
(受験期特有のもの−疲労,不安と焦り) 受験期に限らず,生きるということには不安がつきものですが,受験期は,特に不安が強くなります。どんなに勉強しても,どんなに点数が上がったとしても,絶対的な保証というものは誰もしてくれないためです。先が見えない不安というのが,意識していなくとも常に背中に張り付いている状態ですので,不安になることは自然なことなのです。だから,自分が精神的に弱いとか,もろいということではなくて,真剣に今の受験と向き合っているのだと,まず自分が思ってあげてください。不安が強くなると,だんだん焦りも出てきますが,これも自分のせいではなくて,自然なことだと受け止めてもらうことがポイントです。 皆さんの中で,体調不良とか,ちょっとヘンだと感じている方はどのくらいいますか−何人かいらっしゃいますね。もし誰もいなかったら,これは「皆さんもっとしっかり受験に向きあったほうがいいですよ」と言うところでしたが,安心しました(笑)。
(年齢的な視点) このように皆さんの心情は,受験生という立場から来る疲労や不安,あせり,そして年齢的なものからくる気持ちのゆれ,その二つがかぶさっている状態ですので,ただでさえ疲労して不安定になっている,それが自然ということです。このような状態が出てきたら,自分を責めるのではなくて,自然なこととして受け止めてください。 ○ストレス時には何が起こるか ストレスが強いときは,その人の弱点が出てきます。気持ちが不安になってイライラする人,自分を責める人など精神的に不安定になったり,体調不良で現れたりと,個人個人のクセがあります。そのクセを知ること,つまり疲労時のサインをつかむといいと思います。受験というのは長期戦ですから,サインが出たときに対処して,長期戦を乗り切る,そんなスタイルです。受験以外でも使えますので,自分のサインは何か,というのをつかんでみてください。 ○メンタルヘルスの保ち方
(生活のリズム)
(睡眠時間)
(休息のコツ) 「はやめ」−間に合わないからといって疲れ切るまで勉強しない,ということです。100%でなくて8割くらいで止めておく,そして休みを入れるということです。例えば,予備校の授業は50分ですが,これはうまく計算されていて,人の集中力は50分が限度といわれています。試験直前なら30分でもいい。そのくらい早めに休むということです。 「みじかめ」−休む時間をダラダラ長く取らない,ということです。50分の勉強後に10〜20くらい休む。長めに休みを取ると,頭がなかなか戻ってきにくいので,一日のうちの勉強時間を決めたら,その中に休息時間を小刻みに入れていくことが必要です。 「計画的に」−勉強しているうちに疲れたから何となく休む,となると,休むことへの罪悪感のようなものがついて,休んだことが積極的な開放感にならず,疲労感に繋がっていくので,休むことを計画的に考える,ということです。 休みに何をするかですが,短い休みで簡単でリラックスできること−漫画とか,おしゃべりとか,昼寝とか,何でもいいです。何もないという方は,タオルを水でぬらして軽く絞って,それを冷凍庫に入れておいて,勉強に疲れたら取り出してきて,首筋に当ててみてください。夏はいいけど,冬は…(笑)。何か違う刺激を与えることがお勧めです。体育会系の部活に入っていたという方は,腕立て伏せ,腹筋でもいいですし,いろいろ,自分に合うものを試してみるといいと思います。 ○不安や焦りへの対処 不安になりやすい人は,漠然と先のことを見てしまいます。捉えどころのない,何もできないという感覚につかまれると,不安,焦り,イライラが出てくるので,自分が具体的にやれることを見つけることです。紙に不安なことを書き出して−書くことによって,不安から少し距離を置くということにもなります−その中で,具体的にできそうなことに○をつけて,まずは実行します。優先順位どころじゃないという方は,とにかく不安でも不満でも紙に書き出して,それを丸めて,ゴミ箱に捨てたり,壁に投げつけたり,気の済むまでやると,少しスッキリして,気持ちの余裕が出てきます。夜は考えがマイナスの方に行きがちですので,書き出したら寝て,翌朝考えるようにすると効率的になると思います。 また,足元だけを見るようにします。階段を登るとき,上を見ていると「登らなければ」と思って疲れが出てきますが,足元を見てまず右足,それから左足,それで気がついたら登り終えてしまった,というようにする−今の自分にやれることだけをまず見るようにする,そういうイメージです。不安が強いときは,「逃避の日」といって,何もしない日を作るのもいいと思います。 それから,試験直前に「ああダメかもしれない」と思ったら,机の前に,いままで取り組んできた教科書や参考書を並べてみます。これだけ自分は勉強してきた,ということを確認するのです。以前より1問でも2問でも多く解けたと確認することが,受験直前の自信のためにも大事ですし,考えるだけでなくて眼で見るインパクトというのもあります。 基本的には,自信満々で試験に臨むとか,仕事に取り組む,という人はいないのですね。皆さんの年代ですと,この時期に自信満々で受験しているとすれば,それこそ変な話で,自信がないほうが自然です。自信というのは,ないけれども一歩一歩やってきて,あとで振り返ったらついてきた,そういうものです。自信がない中で何をやるか,そういうふうに考えること,自信はないけど今やれることに眼を向ける,それが不安や焦りが強いときへの対処のコツです。 ○医療機関受診のコツ 学生相談やカウンセリングを利用して乗り切る人もいます。不眠とか気持ちの落ち込みがひどい場合,受験期だけ睡眠導入剤を飲んで,リズムを作ってそれで乗り切る人もいます。薬を飲み始めると一生飲まなければならないかというと,そういうものでもなくて,受験が終われば解消されるという面がありますので,ひとりで抱えずに,専門家に相談することが必要です。 精神科なり心療内科になると思いますが,いろいろな先生がいて,相性の問題もありますから,いちど行ってみて自分に合わなかったら,別のクリニックに行くという心持でいいかと思います。「何もありません,大丈夫です」と言われたら,心配しすぎだったということで,今より悪くなったときのための顔見知りのクリニックができた,というくらいの気持ちで考えておいて,受験期の辛いときのお守りにしておくといいのではないかと思います。 なお,不眠が長く続く(3ヶ月以上)とか,気持ちの不安定だけではなく涙もろくなったとか,げっそり痩せてきたとか,そういう場合は受診をお勧めします。何かぶつぶつ独り言を言うとか,見張られている感じがするとか,対人関係で過敏になってきたら,これもクリニックで薬を処方してもらうと,快方に向かうことがあります。 ○あがりへの対処 いくつになっても共通の悩みだと思いますが,これは,不安や緊張と同じで,ある程度は必要なものです。無理に抑えようとしないことです。今日の私みたいなもので,話し始めるとどうにかなるものです。受験生の場合ですと,まず解答用紙に名前を書く。それから,どの問題から解くかを決める。その問題を読む。そうして,目の前にあることに集中していきます。自分のお守りになるものがあれば,それにあやかるのもひとつの方法です。何でもいいのですが,自分を助けてくれる,精神的な安定を助けてくれるものを何か探して,それを身につけて試験に臨むのも,いいのではないかと思います。 前日の過ごし方ですが,眠れないときは,横になっているだけでも疲れが取れます。そして,試験に受かって,研修を受けたり,仕事したりしている自分を,漠然とイメージする時間を持つといいと思います。みんな緊張して眠れなくて,ダメだと思いながら試験に臨むのがオーソドックスなところです。受験期というのはすごいストレス状態だと思いますが,ここで気持ちを安定させるとか弱点を知るということができると,これからの人生に応用可能ということになるわけです。そんな意味でも,すごく貴重な体験をしているのだと思ってもらうといいのではないかと思います。 ○さいごに 心理の仕事をしていると,その人の人生にとって必要なことは,そのときに現れる,という感覚があります。精神的な病気になるのも,その人が生きていく中で「偶然」ではなく「必然」−心が死んでしまわないために−ということです。また,私は予備校を2年前に辞めましたが,その後もこうして皆さんとお会いできたということは,何かしら受験生との縁がある,そういうふうに考えられるわけです。ですので,もし試験に失敗しても,それは,次に−捨てないと新しいものは入ってきませんから−何か出会うチャンスなのだ,というふうに捉えるといいのではないかと思います。 精神科で勤めていちばん思うことは,何が人生の幸せか,ということは,本当に分からない,ということです。病気を抱えながらも豊かに生きている方がいる一方で,あくせく働いて,疲労しきっている方もいます。本当に,人生で何が幸せかということは分からないと思います。ですから,もし落ちても,命を絶つということだけは踏みとどまって欲しいと思います。“どんなに辛いことがあっても40歳までは生きてみること”,という話を聞いたことがあります…あ,40歳以上の方も勿論です(笑)。何かお困りのことがあったら,いろいろ頼ってみることをお勧めします。 だいたい本日お話しようと思ったことは以上です。ご清聴ありがとうございました。(拍手) ◆編集後記
今回は,東京ミニ・オープン・キャンパスの模様をご紹介しました。なお,2008年度の入学試験問題及び出題趣旨について,ホームページに掲載されております。下記をご覧ください。
また,今回は,法科大学院における「心理学的法曹実務教育プログラムの構築」の一環であるメンタルヘルス講演会の第三弾として,小林愛先生をお迎えして行われた「ストレスマネージメントの方法」講演会の概要をお送りしました。講演概要の掲載にご快諾いただいた小林先生に,心から御礼申し上げます。上記プログラムの概要については,下記をご覧ください。 (平塚記)
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