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東北大学法科大学院メールマガジン第22号 09/18/2007 ◇オープン・キャンパスのご案内
東北大学法科大学院では,オープン・キャンパスを以下の要領で開催いたします(ホームページにも掲載しております。)。 開催日時:2007年10月14日(日)13:00-17:00(受付12:30〜)
会場:東北大学片平キャンパス,法学研究科第1号棟(法科大学院棟)
プログラム: 参加を希望される方は,opencampus@law.tohoku.ac.jp 宛,住所・氏名・電話・模擬講義のクラス希望(既修者クラス/未修者クラス)を明記の上,事前にご連絡いただけると幸いです。 ご連絡の際に,質問等あらかじめございましたら,お書き添えください。質問を提出していただいた場合には,できる限り資料等を用意したうえで,プログラム「個別相談・懇談会」等でお答えすることができます。
東北大学法科大学院の受験を希望される方はもとより,法曹の仕事に関心のある方,法科大学院への進学を考えている方など,たくさんの方のご参加をお待ちしています。 今回は,倒産法・応用倒産法を担当している河崎祐子准教授に,東北大学法科大学院の魅力について語っていただきました。 東北大学法科大学院の魅力
河崎です。「倒産処理法」一筋十ン年の研究者教員です。
憧れの東北大学とその優秀な学生さんと向き合って半年――。 (1)まず、法科大学院としての施設、たたずまいについて。 東北大学の法学部は広瀬川を渡って青葉山の上方にありますが、法科大学院のある片平キャンパスは、仙台駅に程近い平地にあります。一言で言えば閑静な大学街ですが、徒歩十数分で東北地方の都・仙台の繁華街にも行けてしまう、大変便利な立地です。また、周辺には裁判所やその研修所があり、法科大学院生の夢とロマンを大いにかきたててくれるようです。 キャンパス内は緑豊かで、広々と、開放的な空間が広がっています。 法科大学院のメインの施設を含む本部棟は、法科大学院の開設に備えて近代的に改装がされています。それゆえ、本学の施設は大変便利で「新しい」のですが、ふとした瞬間に、確かに歴史のある建物がベースとなっているのだと気付かされて、感慨深い思いをすることがあります。 例えば、前期の「倒産法」の授業は、いつもは近代的な大教室で行っているのですが、施設管理の都合上やむなく教室変更との指示があったところ、変更された教室は、なんと、いまや観光名所としても有名な「魯迅先生の階段教室」。母国の発展に貢献するという使命感に突き動かされていかばかりか真摯に学んだのであろう魯迅の姿と、司法試験受験に向けて必死に勉強する学生さんの姿が重なるようで、なんともいいがたい感慨を覚えました。また、かつて医学部の授業が行われていた教室で、現代の最先端の法律の講義をすることになるとは、たまたまでしょうか、それとも、やっぱり医学と法学には何がしかの因縁があるのでしょうか。
さて、この本部棟の前には、青々と芝生が広がっていて、天気のよい日には人間の、あるいは猫の親子連れが、よく日向ぼっこをしています。また、片平キャンパスには理系の学部関係の施設が多くあるため、文系の学生とは明らかに雰囲気の違う学生さんが難しい顔をして歩いているのとすれ違うことも少なくありません。 (2)授業について。 ここでは、本年度の前期授業期間中に授業参観(※)をさせていただいた、佐藤裕一弁護士がご担当の「ローヤリング」の授業をご紹介しましょう。 (※)東北大学法科大学院には、授業の質の向上を図るためのFD(ファカルティ・デベロップメント)の一環として、教員が他の教員の授業を参観し、その後アンケートへの回答という形で相互に授業を評価し、提言等をする授業参観制度があります。 私が参観させていただいた授業日には、「模擬・債権者説明会」が行われていました。法科大学院における模擬形式の授業としては、「模擬裁判」をよく見聞きしますが、「模擬・債権者説明会」というのはおそらく他にはない、初の試みではないでしょうか。 「債権者説明会」とは、企業が倒産して破産や民事再生といった裁判上の倒産処理手続が申し立てられた場合に、倒産によって本来の債務の弁済ができなくなった(ご迷惑をおかけすることになる)債権者に対して、現状や将来の見通しを説明することを目的として、倒産債務者(実際にはその代理人である弁護士)が主体的・自主的に開催する説明会です。債権者説明会は、裁判所が召集・主催する法手続上(公式の)債権者集会に比べて、より活発かつ実質的な議論が行われることが多いことから、特に債権者集会が任意化された改正後の倒産処理手続において、債権者に対する情報開示の機能及び手続参加機会の契機として注目がされています。 また、倒産手続はそもそも非公開の決定手続で進められ、ましてや利害関係人を対象とした集会の類には、研究目的といえども通常は事件の部外者が簡単に「現場研修」させてもらうことはできません。ですので、今回の授業参観は、一倒産法研究者としても大変ありがたい勉強の機会でした。
さて、今回の模擬形式授業は、通例の授業の枠内でのことですから、ゼミ室内で10名程度の受講生が普段着姿で向き合って行われており、一見すると普通のゼミと変わりがありません。ですが、素材とされた「事件」は佐藤弁護士が実際に担当された民事再生事件がベースとなっており、事前にTKCにアップされ配布された授業資料も、かつて佐藤先生が実際に作成された説明書が元になっているとのこと。 最初20分程度佐藤先生から倒産法制についての簡単な講義があったのち、いよいよ模擬債権者集会の開始です。あらかじめ弁護士役に指名されていた二名の学生が佐藤先生とポジション交替をして、債権者役を務めるそのほかの受講生と対面する形で着席しました。
まず、弁護士役の一人が穏やかに説明を始めました。 そうした中、佐藤‘債権者’先生が挙手し、説明会資料において示されている具体的な数値をふまえて再生に向けた予想収益の実現可能性について質問をして、さりげなく‘攻め方’のお手本を示してくれました。あるいは、みなが気付けないでいる多様な着眼点を“こんなのはどうですか”といいタイミングでどんどん問いかけられていると、 ‘債権者’側にはだんだん勢いがついていきます。 債権者集会を録画・録音したいがいいか、との質問には私自身ちょっとどきっとさせられましたし、教科書でよく語られる「少額債権」の扱いについて、具体的事件の中で条文上の意義を改めて捉えると大変納得させられました。そして、関連中小企業への連鎖倒産の不安が指摘されて大いに盛り上がったところで、残念ながら授業時間いっぱいになってしまいました。 90分という限られた時間内ではありましたが、債権者説明会において想定されうる質問は、佐藤先生の的確なご助言もあって、ほとんど出されていたといえ、債権者説明会についての理解は十分に深められたように感じられました。
弁護士役も債権者役も、それぞれに質問やそれに対する回答を考えてくるように予め予習方法につき指示されていたとのこと。かなりの事前準備をして授業に臨まれたことは、授業を参観していて察せられました。それでも、予想していた質問であっても、いざその場で問われて的確に答えるのは難しい、というのが‘弁護士’学生さんの感想でした。 このような模擬形式授業に参加することは、学生さんにとっては、将来の実務を見据えてのよいトレーニングになると同時に、倒産の現場をリアルに体感することで試験勉強への活力、刺激剤となることでしょう。 :生活の身近にはない裁判手続については特に、学習を進めるにあたって「イメージ(想像力)」は存外重要なものです。 また、法科大学院での教育に携わる立場としては、今回の授業参観を通して、司法試験合格後の実践を睨みつつ、司法試験合格に必要な法的知見を深める指導という、実務家教員が法科大学院の教育を担当するということの醍醐味を間近に拝見した思いです。
佐藤先生からも、次のようなコメントをいただきました。
実務家と研究者という得意領域の異なる教員が、よりよい法曹を育むという理念のもとに集まり、学生の教育を通して教員自身も ‘教育’されていく――。そしてその‘教育’の成果をまた学生に還元していく――。 常にかくありたい、と強く思います。 ◆編集後記 夏の暑さも峠を越え,少しずつ,秋の気配が感じられるようになってきました。スポーツの秋,芸術の秋,読書の秋…秋にもいろいろありますが,河崎祐子先生がエッセイで語っておられる,東北大学法科大学院の魅力が引き立つ季節ともいえましょう。学問を修めるのに恵まれた環境の下で,より良い法曹を育むための真剣勝負。そんな緊張感が漲っています。 今年もオープン・キャンパスの開催が間近となりました。また,既にお知らせしてありますとおり,平成20(2008)年度入試関連情報を掲載中です。入学を検討されている方は,ぜひご覧ください。
(学生募集要項) (平塚記)
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