東北大学法科大学院メール・マガジン
第11号 07/18/2006
◇平成19(2007)年度東北大学法科大学院学生募集要項の発表
このたび,「平成19(2007)年度東北大学法科大学院学生募集要項」ができました。
本学への入学を検討されている方は,ぜひご覧ください。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/info/boshuyoukou.html
出願書類の用紙の請求は,テレメールWebから行うことができます。
請求方法の詳細は,以下のアドレスにアクセスした後,ページ内の指示に従ってください。
http://telemailweb.net/web/?420005
◇ミニ・オープンキャンパス(東京入試説明会)のご案内(既報)
東北大学法科大学院では下記により「ミニ・オープンキャンパス(東京入試説明会)」を実施いたします。
開催日時:2006年8月5日(土)14:00-16:00(13:30受付)
会場:東京八重洲ホール,701会議室
東京都中央区日本橋3丁目4番13号新第一ビル
http://www.yaesuhall.co.jp/
プログラムは下記サイトをご覧下さい。
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/opencampus/#tokyo
参加を希望される方は,
opencampus@law.tohoku.ac.jp
宛てに氏名・連絡先・所属を明記の上,事前にご連絡いただけると幸いです。
ご連絡の際に,質問等あらかじめございましたら,お書き添えください。質問を提出していただいた場合には,できる限り資料等を用意したうえで,プログラム「個別相談」でお答えすることができます。
※事前の申込をなされていない方も,当日のご参加を心から歓迎いたします。
◇オープンキャンパスの実施報告
去る2006年7月2日(日),東北大学片平キャンパスにて,2006年度東北大学法科大学院オープンキャンパスを実施いたしました。梅雨空の下,80名近くの来場者を迎え,盛会のうちにプログラムを終了することができました。ご来場いただいた皆様に,心から御礼申し上げます。
なお,ご質問いただきながら十分にお答えできなかったものもございました。後日Q&Aの形でHP上でお答えする予定です。Q&A更新の際にはメール・マガジンにてご案内いたします。
◇教員エッセイ
今回は,本学で民事系科目を担当している小粥太郎教授(Prof. KOGAYU Taro)に,1年次生配当科目「民法」の授業風景について語ってもらいました。
「双方向授業」
彼はいつも、前の席に座るクラスメイトの背中に隠れるように座っていた。授業中は、眼鏡越しに怪訝そうな顔を見せたり、眉間にしわを寄せて天井を見上げたり。かと思うと、急に机に向かってノートを取ったり。積極的に授業中に発言を求めるようなことはなかった。教師としては、それだけでも十分に気になる存在だった。
彼が教師のところに質問を抱えてやって来たのは、開講後間もない頃だったと思う。はじめての質問は、いくつかの基本的事項の確認を求めるものだった。そのうち、いくら勉強をしても民法がわからないという悩みを漏らした。何がわからないのかがわからない、という。
彼の具体的な質問のひとつは、ホテルの「予約」が「契約」だということの意味がわからない、というものだった。教室では、次のような説明が行われていた。Aさんが、電話をかけてホテルの予約をすることによって、法的な意味での契約−−宿泊代金を払う代わりに泊めてもらうという契約−−が成立していれば、契約当事者であるAさんとホテルに契約上の権利義務関係が発生する。ホテルの予約は、法律的には契約にあたるのがふつうである。具体的にいうなら、契約が成立していたとすると、Aさんにはホテルに対して泊めてくれという権利が生じ、他方でホテルは、Aさんを泊めてやらなければならないから、それができなければ、損害賠償責任などを負う可能性がある・・・。どの法科大学院の民法の授業でも、同じような話題が提供されているのではないかと思う。
教師がなしえた説明は限られていた。日常用語の概念と法律用語の概念が一致するわけではない。実質的に権利義務関係の発生を認めることが妥当だというときに、契約の成立を認めるということもできる、しかし、説明としては法的効果を生じさせる意思表示の合致がホテルの「予約」の場面では認められるから、それが契約だということになる・・・。
彼は、納得しかねているようだった。その後も、同じような問題について、また、同じようなやりとりをしたように思う。彼の疑問が氷解したようにはみえなかった。
彼の悩みの種が何だったのかは、未だによくわからない。予約というコトバは、日常用語としても、法律用語としても使われる。契約というコトバもそうである・・・。教師は、日常用語の世界と法律用語の世界の関係について、はっきりとした見通しを持たないまま、ありきたりの説明を繰り返さざるをえなかった。西欧伝来の「法」については、まだまだ分からないことが多い。
予約と契約の問題は、その後も、なんとなく気になっていた。前期の授業を終えた教師は、猛暑の中、問題解決の糸口を内外の書物に求めることを思い立った。ところが、後期の授業はすぐにはじまり、授業、学内事務その他諸々の仕事の合間の調べ物では、なかなか光が見えない。それでも、かすかに見えたように思えた明かりを小さな論文にまとめようと苦吟している。それは学界に着実な貢献をする類の本格的な論文ではない。しかし、そこには、彼の質問をきっかけとして教師が直面させられた随分と奥の深い問題の所在と、それについての教師の格闘の痕跡が残されるだろう。
翌年の春、教室では、また、ホテルの予約の設例が説明された。教師は、昨年よりは少しだけ「分かったような」気になって説明をした。
授業を終えて新緑のキャンパスに出ると、うつむき加減にゆっくりと図書室に向かって歩く彼の姿が見えた。
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発行:東北大学法科大学院広報委員会
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