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2006年度 東北大学法科大学院入学試験問題及び出題趣旨について問題
出題趣旨<公法(憲法)>憲法上の権利は、一般に、個人に対して、公権力に対する関係で保障されるものである。本問は、その個人が自ら公権力の担当者である場面を解答者に設定させることによって、人権論の輪郭を、立憲主義の基本原理に遡って自ら再構築することができるかどうか、及び、その作業を、抽象論としてではなく具体的な設例を構想しながら遂行することができるかどうか等を問おうをしたものである。 <公法(行政法)>
行政訴訟の基本知識を問う。具体的には、取消訴訟の原告適格(行政事件訴訟法9条)という、訴訟要件論の基本中の基本事項について、理解度を確認するもの。 <民法> (1)共同相続と登記の問題、(2)共有物を共有者の一人が占有する場合の他の共有者による明渡請求の可否、について、検討が行われている必要がある。(1)に関しては、Cが、共同相続によって取得した甲土地の持分を登記なしにDに対抗することができるか否かが問題である。Cは登記なしに自己の相続分をDに対抗することができるとするのが判例とされるが、学説は民法177条の適用あるいは同法94条2項類推適用によるD保護の可能性を示唆する。(2)に関しては、CからDに対する明渡請求を否定する判例法理を踏まえた検討が望まれる。 <刑法>
本問は、簡単な事案を素材にして、窃盗罪の実行の着手時期に関する基本的知識の有無、暴行の程度、既遂要件などの事後強盗(致傷)罪の成立要件に関する基本的知識の有無、(共謀)共同正犯の成立要件とその範囲、(共謀)共同正犯と従犯との区別など共犯に関する基礎的知識の有無、罪数に関する基礎的知識の有無を確認すると同時に、事案を適切に把握し、それらの知識を具体的事案に適用する能力を有しているかを確認しようとしたものである。 <商法> 会社法を学習する上で必ずおさえておかなければならない論点について、簡単な事例問題によって基本的な理解を問うたものである(本問の解答に関するかぎり、改正前商法によるか新会社法によるかによって実質的な違いはない)。事前の救済として新株発行差止請求を、事後の救済として新株発行無効の訴えを挙げるべきことはいうまでもないが、どのような事由が差止事由(法令違反、著しく不公正な方法による発行)または無効原因(明文の規定はない)に当たるか(または当たらないか)を事例に即して論じていなければならない。 <民事訴訟法> 訴訟物とは何か、さらに、判決理由中の判断に既判力が及ぶ事例にはどのようなものがあるかを問うことにより、既判力の客観的範囲に関する理解を試す問題である。 <刑事訴訟法>
最高裁昭和30年12月9日第2小法廷判決(刑集9巻13号2699頁)の事案を用いて、その判断内容に関する基本的知識を有することを前提に、伝聞法則に関する理解度(問題の所在を的確に指摘し、事案に即して議論を展開することができるか)を確認することを目的として出題した。
本問は、建物の区分所有等に関する法律に関する細かな知識を問うものではない。 <面接試験・未修者用> 本問は、いわゆる六法には直接かかわらない裁判例に現れた身近な事案に一定の加工を施した設例を用いることによって、解答者に法及び法学の知識があることを必要としないかたちで、社会問題を法問題として把握する作業を行うために必要な前提をなす能力――――例えば、法論理に整序される以前のより一般的な次元での基礎的な論理構成力―――があるかどうか等を問おうとしたものである。 |
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