
東北大学法科大学院の第1の特徴は、「優れた法曹の養成」を目的としているということです。修了者が裁判官・検察官・弁護士のどのプロフェッションに進んでも、常にその中でトップクラスの実力を持った法律家になることができるように、充実したカリキュラムが組まれています。現在、法実務の世界は、専門分化が激しく、ジェネラリストより、スペシャリストに対するニーズが高まっています。例えば、金融や知的財産、また渉外法務でもかなり専門化が進んでいますし、企業法務の中ではM&Aやデリバティブ取引といった、非常に高度な分野が発展しています。刑事でも、経済犯罪やホワイトカラー犯罪、場合によっては、知財関係の犯罪も扱わなければなりません。これらの法実務では、かなり高度な知識と技能を必要としますが、このような専門化した実務に対応するためには、まず、法科大学院の2年あるいは3年の課程で六法を中心とした法律基本科目の基礎的な理論を十分に理解する必要があります。基本的な法分野をよく理解して、しっかりした理論的土台をつくらないと、実社会で高度な発展を続ける法実務に対応することはできません。法学未修者の方にとっての1年次配当科目と、既修者が加わる2年次に配当されている実務民事法・実務刑事法・実務公法の3科目は、ハードで充実した教育内容を備え、本法科大学院カリキュラムの中心を占めています。
本法科大学院の第2の特徴は、研究者と実務家が協力し合って教育しているというところにあります。法科大学院によっては、研究者は法律基本科目だけを教え、実務家は実務基礎科目を教えるというように、完全に役割が分離しているところがありますが、東北大学法科大学院はこれとは異なり、研究者と実務家が共に、法律基本科目と実務基礎科目を協力して教えています。カリキュラムの中で法実務と理論が架橋されているので、理論は理論だけ、実務は実務だけでお互い別の方向を向いて教えるというわけにはいきません。研究者も実務家も、スタッフはそれぞれの分野で一流の教員であり、法実務の理論的分析、法理論の実践的応用について、日々分かりやすくかつ高度な授業が行われています。
最後に、法律基本科目や実務基礎科目だけではなく、展開・先端科目や基礎法・隣接科目も、教養を深めるという点でとても重要です。法理論・法実務が専門分化した後に、本当に実力が試されるのは、その専門分野ではなくて、幅広い法律全体の知識、法と政治・経済社会の動きとの関連についての深い理解であり、そのような素養があることが重要な意味を持ちます。本法科大学院のカリキュラムはこの点でも充実しています。たとえば、法律家は官庁に入ったり議員になったりして、立法に携わることもあるでしょうが、そこでは、法律の解釈・適用ではなく、政策立案能力も試されます。そんなとき、ここで「法と経済学」という科目で政策科学の基礎を学んでおけば、思わぬ実力を発揮することができるでしょう。
法科大学院では少人数のクラスで双方向授業を行っています。その中心は、ケースメソッドを使った教員と学生の間の質疑応答ですが、実は、学生同士の議論や双方向の勉強会もとても重要です。是非、ここで共に学ぶ関係をつくり、さらに先輩後輩関係を築いていってください。そのために、私たちは、講義演習のための設備を充実するだけでなく、学生同士の勉強会を開くための学習環境も着実に整備拡充しています。2010年の夏には、エクステンション棟が完成し、新しい法政実務図書室や模擬法廷教室、研究室、コモンルーム、法政実務教育研究センター室等ができ、先輩法曹が自由に在学生と交流できる環境が整います。仙台は、落ち着いて勉強できる杜の都、ここで法を学ぶことで、各分野で活躍しながら、次代の実務家・研究者を育てる「優れた法曹」となることを是非目指してください。
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